穏やかな日常を丁寧に描くドラマ『きのう何食べた?』
恋愛ドラマ、と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。
高校生同士の胸キュンもの、大人の駆け引き、あるいは初めから終わりが見えていた悲恋...
結ばれる過程、関係の終わりを扱うようなストーリーを連想する方が多いのではないかと思う。
しかし、ここで紹介するドラマ『きのう何食べた?』はそのどちらでもない。
シロさんとケンジの二人がただただ穏やかな日常を送るのを、主にシロさんがつくるご飯にフォーカスしながら丁寧に描いた作品だ。
そう、ご飯なのである。
著者は見始めたのは今年に入ってからだが、当時から放送後にはTwitterのトレンドを賑わせる人気ドラマで、続編も製作された。
今回はこのドラマの簡単な紹介と見た感想を記事にしたいと思う。
主人公たちはどんな人?
早速、上記のように昨今の恋愛ドラマと比較すれば"異例"ともいえるこの作品において物語を紡いでいる主人公たちを紹介しよう。
二人は男性であり、同居する恋人同士でもある。
西島秀俊さん演じるシロさんは弁護士をやっていて、几帳面でお金の管理に厳しい。
スーパーの特売情報をしっかり把握していて、一円でもお得に食材を購入することを日課としている。仕事も丁寧なので料理がとても上手。
マメなのはいいところだけれど、その分気付きすぎるから人より疲れそうだなぁとも見ていて思う。実際そんな描写もある。難しい顔をしていることもしばしばだけど、ケンジの頑張りにもすぐ気づくし感謝を素直に伝えるので、ケンジがベタ惚れしちゃうのも頷ける。
一方、内野聖陽演じるケンジは美容師をやっている。天真爛漫という言葉が似合い、まっすぐ育ってきたんだなぁという感じ。でも人の気持ちには敏感だし、傷つきやすいところがある。自分の気持ちに正直で嘘はつけない。シロさんが倹約家なのに対し、ときどきコンビニでついハーゲンダッツを買っちゃう。さりげない気遣いが得意。内野さんの演技力も相まって、思わずかわいい~!と言ってしまうくらいかわいくて、なかなかファンの多そうなキャラである。
ドラマではほぼ毎回、少し早めに帰宅するシロさんが料理を作ってケンジを迎え、共に食卓を囲むシーンがある。
「同じ釜の飯を食う」とは苦楽を共に分かちあった親しい間柄のことを言うが、まさにシロさんとケンジはそれに当てはまる。同じご飯を食べて感想を共有しあえる人がいるのは、一人暮らしの著者からしたらとても羨ましいことだ。
ドラマはプラトニックな描写がほとんどで、シロさんもケンジも互いに尊敬しあっていて心から繋がっているのだが、二人の暮らしには性的マイノリティゆえに世間からの障害や偏見、無理解がついてまわる。
そういった決して優しくない現状からも目を逸らすことなく、しかし、辛辣になりすぎないように描かれているところにも匙加減の絶妙さが感じられる。
二人が悩みに悩んでも自分たちなりの答えを出していく姿には見ているこちらすらも勇気をもらう。
おすすめポイントは?
シロさんやケンジも素敵なキャラクターだが、彼ら以外にも魅力的な登場人物がたくさんいる。個人的には"ジルベールワタル"が最高にいい味を出していておすすめだ。
ちなみにジルベールとはこの金髪美少年のこと。BL初期の金字塔と言われる竹宮恵子さんの『風と木の詩』の主人公である。では"ジルベールワタル"は...?ぜひ作品の中で答え合わせしてみてほしい。
また、こちらも嬉しいポイントだが、シロさんたちが作る料理はレシピを丁寧に教えてくれる上に、手頃に作れるものが多い。見ているだけでお腹がすきそうな数々を自宅でも再現できる。公式のレシピ本も販売されているのでそちらも参考になるだろう。
最後に
『きのう、何食べた?』は人との接触が減ったり一緒にご飯に行くハードルが上がってしまったりのコロナ禍だからこそ見たい作品だ。人との関わりはやっぱり大事だし、一人でもご飯を食べるのはとても大切なことに変わりない。
心にも目にも栄養になってくれること間違いなし。
原作は『大奥』などで有名なよしながふみさんの漫画である。『モーニング』で連載中で、現在17巻まで出ている(2020年8月発売)。
2021年公開予定の映画にもなるそうだから、今後も目が離せない。